2023年1月25日 掲載
第29回 牧草を美味しく食べるポイント
最近、「食育」という言葉をよく耳にします。食育とは生活の基礎作りに役立つ、基本的な食習慣を学ぶ教育です。
いったん身についてしまった食習慣を変えるのは、人間でも大変ですよね。そのため、子どもの頃から正しい食生活を学び、健康に暮らそうというのが食育です。
これは、うさちゃんにもいえること。牧草嫌いだったり、一種類の牧草しか食べてくれない、といったうさちゃんもいるでしょう。
「三つ子の魂百まで」といわれるように、小さい頃に覚えた食習慣を変えるのはなかなか難しいかもしれませんが、うさちゃんの健康のために正しい食生活を教えてあげられるのは、飼い主である私たちにしかできないことです。
うさちゃんにいつまでも元気に過ごしてもらえるよう、正しい牧草の食べ方をうさちゃんの特性に合わせて取り入れていきましょう。
【POINT1 うさちゃんは草食動物と心得る】
うさちゃんは草食動物です。食事のメインが植物なのはもちろん、うさちゃん独特の胃腸の動きをよくするためにも繊維質は欠かせません。また、一生伸び続ける常生歯を正しく削るためにも繊維質は必要です。
このような体の仕組みから、食事は繊維質の多い牧草を中心にあげることが必要になります。中でも繊維質の多い、イネ科の牧草が主食に適しているでしょう。
成長期や体調不良のときには、補助牧草として栄養価の高いマメ科の牧草をあげるのもいいですが、うさちゃんの食事の基本はイネ科の牧草。そして足りない栄養素はフードで補う。
まずはこの基本を飼い主さんが守る心づもりをしておきましょう。
【POINT2 色々な牧草をあげよう】
うさちゃんは、とても味覚が優れていて、私たち人間よりも味に対してずっと敏感です。また甘いものも大好きですから、美味しいものとそうでないものの区別ができてしまい、偏食になりがちです。
でも好きなものだけを食べていては、栄養が偏ってしまいますから、偏食を少しでもなくすためにも色々な種類の牧草をあげて、味覚の幅を広げてあげましょう。季節を感じることのできる期間限定の牧草や生牧草などの旬のものを食べさせてあげるのもいいでしょう。
また、チモシーを食べてくれている子でも1つの銘柄だけをあげていると、天候や災害などの影響で手に入らなかったり、栄養素が偏ってしまう可能性があります。
日頃からなるべく色々な牧草に慣れさせてあげるようにしましょう。
【POINT3 鮮度のいい牧草をあげよう】
うさちゃんは、味覚もさることながら嗅覚もとても優れています。そのため、匂いによっても食べものを識別していると考えられます。
例えば、開封したての牧草はよく食べてくれるのに、開けてから少し経った牧草はあまり食べてくれない、ということがあります。これは開封したことによって、牧草が紫外線や湿度によって酸化したり、劣化しているから。
嗅ぎ分け名人なうさちゃんに満足して食べてもらうためにも、なるべく鮮度のいい牧草をあげましょう。
開封後は牧草を除湿剤とともに密閉容器に入れて保管すれば鮮度が保てます。また、開封後少し経った牧草でも揉みほぐしたり、叩いたりすることで牧草の匂いがたち、食べてくれることもあります。
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【POINT4 牧草と一緒に水分もしっかりと】
うさちゃんの特性ではありませんが、うさちゃん用の牧草は、ほとんどが乾燥させたものです。そのため、牧草と一緒に水分を摂取することが大切です。牧草とともに常に水も飲めるようにしておきましょう。牧草同様、水も鮮度がいいものを好みますから、水の交換はこまめに行いましょう。 水の衛生面から考えると、ごみやほこりが入りやすい直置きタイプよりもボトルタイプがおすすめです。ただ、うさちゃんによって好みのタイプが分かれると思いますので、うさちゃんが飲みやすい方を選んであげてください。
【POINT5 牧草の置き場所を工夫しよう】
牧草をよりたくさん食べてもらうためには、牧草の置き場所も重要になってきます。牧草入れには、ケージに固定するタイプと直置きするタイプがあります。うさちゃんが無理な体勢にならず、食べやすいタイプの牧草入れを選び、設置してあげましょう。 牧草入れの素材には、プラスチック製、陶製、木製などがあります。衛生面で考えると、プラスチック製や陶器製を、かじるのが大好きな子には、かじり木にもなる木製がおすすめです。 また、食べやすさだけでなく、うさちゃん自身が食を楽しむことも大切です。牧草をおもちゃから引っ張り出して食べられるようにしたり、飼い主さんの手から直接あげるなど、エンリッチメント*を考慮しながら、うさちゃんの好奇心を満たしてあげられる方法を考えるのも楽しいですよ。
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【POINT6 牧草はうさちゃんを安心させる】
POINT3のうさちゃんの嗅覚にも通じますが、うさちゃんにとって牧草の香りはとても安心する匂いのようです。特にうさちゃんにストレスがかかりやすい移動のときなどにキャリーの中に牧草を入れておくと、それだけで安心する子もいます。またアメリカのブリーダーさんは、うさちゃんをラビットショーに連れて行くときには、牧草をいっぱいに敷き詰めておくこともあるそうですよ。 私たちが森林浴やアロマでリラックスするように、森林浴ならぬ牧草浴がうさちゃんにとって心地よい香りであり、癒しの源なのかもしれません。
【POINT7 ダイエット食としての牧草】
すでにフードやおやつが大好きで、牧草はあまり食べてくれない…といううさちゃんもいるでしょう。でもそういううさちゃんを眺めてみると、ちょっとぽっちゃりしていませんか? それはそれで可愛く見えてしまうので、ついそのままの食生活になってしまいそうですが、食育の観点から考えると、やはり健康的ではないですし、病気になるリスクも高くなります。 まずは、おやつやフードを少し減らして代わりに嗜好性の高い牧草をあげてみましょう。美味しい牧草もあると思ってくれるようになったら、少しずつチモシーを混ぜていくといいでしょう。また、動きが活発になる夜はお腹が空きやすいですから、牧草を多めにあげておくと、食べるようになるかもしれません。 うさちゃんの健康のため、ここは心を鬼にして牧草によるダイエットにぜひ挑戦してみてくださいね。
※この記事は、「Shippo vol.4 「牧草」はうさぎの主食です!」のP16-18から抜粋しています。Shippo vol.4をお持ちの方は、ぜひ併せてご覧ください。