2022年12月28日 掲載
第28回 うさぎの牧草ができるまで
海外から輸入されてくる牧草は、どうやってうさちゃんの元まで届くのでしょうか? 「有限会社ウーリー」では、飼料用牧草の産地であるアメリカ・ワシントン州にある指定農家からよりよい牧草を輸入しています。
チモシーの収穫から加工されるまでの工程を伺いました。
【うさぎのためのチモシーを、指定農家で特別に栽培してもらっています】
日本ではうさちゃんの牧草といえばチモシーが主流ですが、アメリカではチモシーの方が少数派の牧草です。
アメリカのチモシーは、主に競走馬や家畜用の牧草として輸出されています。その中でも、指定農家に“うさぎのための牧草”を特別に栽培してもらっているのが、ウーリーの輸入チモシーであり、ウーリーとコラボレーションしている「うさぎのしっぽ」のオリジナル牧草です。
うさちゃんが美味しく安全に食べられるよう、色々な要望に沿って特別に育てられて収穫された牧草から、さらに、うさちゃんにより合うものを選定して輸入しています。それが実現できるのも、現地の農家や輸入業者と信頼関係を築けているからこそなのです。
【牧草の種をまくのは秋。越冬して春先から収穫します】
イネ科牧草の一般的な種まき時期は春と秋の2回です。アメリカの場合、秋にまき、越冬して次の春先から順次刈り取ることが多いそうです。
多年生のチモシーは、一度種まきすると、そのままの状態で数年間は毎年収穫することができます。
収穫時期前のチモシー畑。刈り取る時期によって牧草の品質が変わってきます。
【刈り取り機で刈った牧草は、そのまま畑で天日干しします】
収穫時期がやってくると、大型刈り取り機で刈り取りが行われます。刈り取られた牧草は、広大な畑にそのまま広げられ天日干しされます。
このとき重要なのは雨が降らないタイミングを見定めること。もし天日干ししている間に雨が降って牧草に雨が当たってしまうと、牧草が変色して品質(グレード)が落ちてしまいます。農家さんは天気予報を何度も確認しながら、晴れた日を選んで作業をするのです。
天日干しの途中、専用機で牧草をかき混ぜて空気を入れ、裏返をして牧草を均等に乾くようにします。この一連の作業をフラッピングといいます。
フラッピングの様子。かき混ぜて空気を入れ、均等に乾燥させます。
【乾燥後、集草機で牧草を集めて吸い取りながら圧縮します】
フラッピングして乾燥した牧草は圧縮機を積んだ集草機(ベーラー)によって集められ、圧縮されてキューブ状のかたまり(ベール)となります。
圧縮されたベールはビニールひもで束ねられて、集草機の後ろから落とされて1列に規則正しく並べられていきます。この作業をベーリングといいます。
ベーラーの後ろから等間隔で落とされていく牧草のベール。
【ローラーで荷台に積み込まれ、ストック場へ積み込まれます】
等間隔で並ぶベールはローラーと呼ばれるトラックに拾い上げられ、荷台に積み込まれます。さらに大きなフォークリフトがこれを挟み込み、牧草を保管するストック場にきれいに積んでいきます。
屋根付きのストック場がない場合は畑にストック場を設けるため、上からタープ(防水加工のシート)でカバーしてベールの鮮度を守ります。タープが掛けられた牧草は少しずつ乾燥しますが、鮮度はキープされます。
畑のストック場では巨大なタープを掛けて鮮度を守ります。
【現地の加工場に集められて、圧縮加工します】
牧草のベールは、大型トラックで牧草の加工場に運ばれます。1か所の農家だけではなく、いくつもの農家から集められて数日間ストックされます。ベールにはそれぞれ小さなタグが付けられ、牧草のトレーサビリティが把握できるよう(番号によって農家の名前や収穫日などが分かる仕組み)になっています。
その後加工場にて、圧縮率の異なるダブルプレスやソフトプレス、サイズの違うスタンダードベールやハーフベールなどに加工されます。
超大型のトラックにベールが積み込まれ、加工場へ運ばれます。
【日本に輸出される牧草は、害虫駆除のため燻蒸されます】
牧草会社の敷地内には、アメリカの農水省(USDA)の認定を受けた燻蒸施設があります。日本へ輸出される牧草は害虫駆除を目的とした燻蒸が必要になるため、ここで燻蒸が行われます。
アメリカからの輸入牧草にカモジ草や大麦などが混入してしまうと、稲作などに重大な被害を与える害虫が入り込む危険があるため、未然に防ぐことが必要なのです。
敷地内にある燻蒸施設。ここで牧草の燻蒸が行われます。
【サンプルをうさちゃんに食べ比べさせてから、決定します】
アメリカの指定農家で育てた牧草すべてが製品になるわけではありません。収穫され、保管された牧草の中からいくつものサンプルを日本に送ってもらい、実際にうさちゃんに食べさせてから嗜好性のよいものだけを選んで、輸入しています。「うさぎのしっぽ」のスタッフがアメリカに出向き、直接選ぶこともあります。
※天候不順などにより選択肢が少ない年は、指定農家や輸入業者が決定します。
【二度の目視検査やパッケージングを経て、出荷されます】
輸入が決まった牧草は圧縮された状態で日本へ到着します。そのかたまりを金網の上で少しずつほぐしながら一度目の目視検査を行い、雑草や細かな土埃などを網の下に落下させてふるいにかけます。
さらに金網の上でほこりなどを落とし、白いボード上で二度目の目視検査を行い、最後にもう一度金網の上で最後のふるいをかけます。こうした作業を経て牧草は袋に詰められてパッケージングされます。
金属探知機にかけられて異常がなければ、梱包されて各店舗へ出荷されていきます。
パッケージングしている様子。細心の注意を払ってパッケージングされた牧草が、飼い主さんのもとへ届きます。
※この記事は、「Shippo vol.4 「牧草」はうさぎの主食です!」のP12-15から抜粋しています。Shippo vol.4をお持ちの方は、ぜひ併せてご覧ください。